「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」
新海誠監督の映画が好きで、これまですべての作品を観てきました。
その中で一番最初に観てドハマりし、流れのまま小説版まで買ったのがこの「秒速5センチメートル」です。
ストーリー・音楽・世界観。
どれをとっても濃ゆ~い新海ワールドを味わえる作品になっています。
今回は、先に映画版を観ている人向けの記事となります。
映画を観て、その上で小説版を読むメリットなどについて語っていきたいと思います!
小説版で映画の補足をする
概要
- 著者 新海誠
- 発売 2007年
- ページ数 143ページ(Kindle版)
この小説版は映画公開後に作られたこともあり、「映画の補足」という意味合いが強い一冊となっています。
映画ではわかりづらかった部分やあまり触れられなかったエピソードが、活字となって詳細に描かれていきます。
新海監督は映画版を「誰かを励ませれば」という思いで作ったらしいのですが、「悲しかった」「ショックだった」という意見が多かったことから、補完の意味を込めてこの小説版を書くことにしたそうです。
そんなにショックだったの?


僕は数日ほど引きずりました…。
小説版は映画と同じく、「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3話構成となっています。
映画を観ていなくても問題なく楽しめる内容になっていますが、映画→小説という流れで見るとより心に残る一冊になってくると思います。
小説の見どころ!
「渡せなかった手紙」の内容が明らかに
作中で貴樹と明里がそれぞれの理由により渡すことができなかった「手紙」。
小説ではその全文を読むことができます。
この手紙によって、映画版では想像で補うしかなかった2人の気持ちの推移も、はっきりとした形で追うことができるという内容になっています。

僕的にこの小説一番の見どころだと思っています。
明里視点のストーリー
基本的には映画版と同様に貴樹視点で物語は進んでいくのですが、合間合間に明里視点からの物語も描かれていきます。
1話以降、ちょっとつかみづらかった明里の気持ちを知ることができたのは、秒速ファンとしてすごく嬉しかった部分です。
特に大人になった明里が貴樹との思い出を振り返る場面は胸にくるものが…。(´;ω;`)
映画版で「モヤモヤした」という方には必見の内容となっています。
貴樹の大学・社会人編も
小説版では他にも、映画では語られなかった大学時代の恋愛や就職してからの出来事も語られていきます。
水野さんとの出会いから、映画の「別れ」につながるまでのお話も見どころの一つです。
このあたりを読むと、映画版の感想でよくある「貴樹って大人になるまでずっと明里のこと引きずってたの!?」という疑問に対する答えも知ることができるかと思います。
みんなの評価!
アマゾンの評価 4.3(総レビュー数124)
不満点を解消した内容ということもあって、映画版(3.6)より高い評価となっています。
高評価意見
- 読みやすい文章
- 心理描写が丁寧で深い
- 映画版により感情移入できるようになる
詩的でありつつも、スッと入ってくる綺麗な文章に触れる意見が多かったです。
映像でも文章でもたくさんの人を惹きつける新海監督…。
多彩すぎです。(・ω・;)
心理描写については、これまで感覚的にとらえていたものが、活字化されたことでくっきりとした輪郭をもつようになったという風に感じています。
もちろん感覚のままでもいいと思うのですが、明確になることで作品に対する見方や思い入れが変わる部分もあるんじゃないかなぁと。
そういった意味で「小説を読むともう一度映画版を観たくなる」というのは、僕的にすごく共感できる意見でした。
読んでみての感想!
物語の起点にして主軸でもある「桜花抄」。
2人の状況について少しまとめてみました。
貴樹
- 中学ではサッカー部に入り、新しい友人も作っている
- 明里とのことはなんとか心の整理をつけている
- 渡せなかった手紙には「別れ」の言葉を綴った
明里
- 中学ではバスケ部に入るが、一人で過ごすことが多かった
- 手紙のやりとりは明里から始めた
- 渡せなかった手紙には「決意」の言葉を綴った
手紙のやりとりは明里から始めていることからもわかる通り、岩舟で再会するまでは明里の方が貴樹に依存していたように思います。
新しい環境に馴染めず、貴樹の想像の通り、一人でいることが多かったようです。
結果、一度は貴樹を頼ってしまった明里。
ただ、そのことが後の決意につながっていったんでしょうね。
「一人でもちゃんとやっていけるように。」
岩舟での出来事は双方にとって「世界が変わる」体験でしたが、貴樹の方が気持ちの切り替えに時間がかかったように見えるのは、その決意を固めるのに準備期間が必要だったということではないのかなぁと。
貴樹はなまじ器用に立ち回れる分、それが裏目というか苦悩につながってしまった部分もあるのではと感じています。
「渡せなかった手紙」で気になったのは、岩舟で再会する前と後とでの貴樹の気持ちの変化について。
ホームでの別れ際のシーンを覚えているでしょうか。
明里は「貴樹くんはこの先も大丈夫だと思う。ぜったい!」と言うに留めます。
これは前述の通り、これからは一人でやっていかなきゃいけないという決意からの言葉だと思います。
対して貴樹は、「手紙書くよ!電話も!」と叫びます。
貴樹の方は「続き」や「この先」を口にしてしまうというこの場面。
ここが手紙の内容とはまったく違っていて。
会う前(手紙)と会った後で、真逆と言っていいほどの変化が起きています。(・ω・;)
明里も手紙の内容から多少の変化はあるのですが、貴樹の場合は特にわかりやすくて。
もし手紙を渡すことができていたら、続きを望む言葉は出なかったかもしれません。
あるいは電車が遅れずについていたら、明里への気持ちを抑えることができたかも…。
いろいろなことが重なった結果、「岩舟での出来事」が他とは比べ物にならないくらい特別なものになって、手紙とはまったく違う別れ際の言葉に変わってしまったのでしょうね。
このあたりは手紙の内容が明らかになったことで、より気持ちの変化の流れがつかみやすくなったんじゃないかなと思います。
ただ、この手紙のおかげで心にくるダメージも何割か増しになっているので、読む際にはちょっぴり覚悟をしておく方がいいかもです。
小説「秒速5センチメートル」まとめ!
小説版まとめ
- 渡せなかった手紙の内容が明らかに
- 大人になった明里視点で振り返る秒速
- 大学時代の恋愛、水野さんとの出会いから別れまで
映画版の終わり方にショックを受けた方には特におすすめの一冊となっています。
僕自身もそうでしたが、小説版を読むと少なからず救われた気持ちになれるんじゃないかなぁと思います。
最大の見どころは「渡せなかった手紙」の全文。
読むときは秒速5センチメートルのBGM「想い出は遠くの日々」を流すと、より破壊力がやばくなるのでおすすめ?です。(*´ω`*)
この記事が皆さまのよき読書の手助けになれたら幸いです。